リオンについて

音響・振動計測器の歩み

環境問題への対応からモノづくり、設備保全まで。
リオンの音と振動の技術は暮らしと産業、社会を支え続けてきました。



音の技術で自治体を支援

わが国最初の小型騒音計「N-1101型」
1955年(昭和30年)

戦後の復興期、日本では都市部を中心に、工場や建設現場、交通機関の騒音が社会問題になりつつありました。当時、マイクロフォン・イヤフォン・ピックアップなどの各種センサー類から補聴器などの音響製品までをトータルに生産していたリオンは、それらの製造技術と小林理学研究所の音響物理学の成果を活かしながら、騒音計の開発に着手しました。1956年(昭和31年)に発売された小型騒音計は、各都市の騒音対策や産業衛生などに広く用いられました。以後リオンは東京都の公害研究所をはじめとする行政機関および小林理学研究所と連携しながら、より優れた騒音測定技術と具体的な測定器を開発、提供していったのです。



本格化する公害問題に対応しながら進化を続けた騒音測定器

製品シリーズ化された騒音計「NA-20シリーズ」
1978年(昭和53年)

高度成長期を迎えると、日本各地で公害問題が深刻になっていきました。1967年(昭和42年)には公害対策基本法、翌1968年(昭和43年)には騒音規制法が公布され、各自治体も公害対策に本格的に乗り出したのです。しかし、公害対策の前提となる測定器には、基準となる規格が無く、1970年(昭和45年)に急遽騒音計の日本工業規格JIS C1502が規定されました。その後、計量法の改正(計量法第95条の規定)による型式承認制度が始まり、リオンは通産省に計量器として申請し、昭和49年(1974年)3月、NA-09型は型式承認S-1号を、日本で初めて普通騒音計計量器として取得しました。その後も現地測定における使いやすさや具体的な対策立案に役立つ記録機能や分析機能が求められるようになり、リオンは、エレクトロニクスの技術革新を取り入れながら、これらの要求に応えていきました。1978年(昭和53年)には、回路のほとんどをIC化し、JISや計量法に加え国際規格であるIEC規格にも対応したNA-20シリーズが誕生し、その後の騒音計のベースになりました。



加速度センサー技術から生まれた公害用振動計

公害用振動レベル計「VM-14型」
1976年(昭和51年)

騒音に加えて、都市部の住民を悩ませたのが振動でした。鍛造工場、プレス工場といった工場からの振動に加え、交通量の増加に伴う道路交通からの振動も社会問題化する中で、現場で使いやすく正確に測定できる振動計が求められるようになりました。リオンは、圧電セラミックスを使用した加速度センサー技術、信号処理技術を計測器に実装して、このような社会のニーズに応える公害用振動レベル計(振動計)を開発しました。1976年(昭和51年)に発売されたVM-14型は40dBの広いダイナミックレンジ、最大値ホールド、5秒おきのインジケーターなどを備え、公害振動向けの振動計として、広く使われました。



航空機騒音を詳細に識別
空港周辺の環境を守るリオンの監視システム

環境騒音観測装置

戦後日本の大きな環境問題の一つが、航空機騒音です。1979年(昭和54年)にリオンが開発した航空機騒音観測装置は、航空機の騒音だけではなく、飛行方向の検出機能も備えていたため、航空機騒音への対応を迫られていた全国の自治体や官公庁に広く納入されました。その後、リオンの航空機騒音観測装置は、空港周辺の固定観測地点を結ぶオンラインシステムに発展し、新東京国際空港(成田空港)を始めとする全国の国際空港や国内空港、沖縄普天間基地、嘉手納基地、横田基地など防衛関係の航空基地の周辺に数多く配置されています。



「静音」製品の開発を支えるリオンの測定器システム

1975年(昭和50年)以降、製造業では、製品の付加価値の一つとして、音や振動の軽減が取り上げられるようになってきました。自動車業界では走行騒音、近接排気騒音の許容制限への対応に加え、音の静かな自動車を求める顧客の声が高まりました。また、家電やOA機器の世界でも静音タイプが人気を博しています。このような状況に対応するために、リオンでは音響・振動測定の高度な技術を活かして、企業の個別のニーズにきめ細かくお応えする測定器を開発しています。例えば、自動車メーカー向けの走行騒音測定システムから、住宅メーカー、建材メーカー向けの建築音響測定システム、家電やOA機器メーカー向けの音響パワーレベル計測システムなど静音設計を支える音響測定システムまで、リオンの多彩な測定器が多くの企業の製造現場や研究部門で活躍しています。


社会のインフラを守るリオンの地震計

地震の多発国である我が国では、万一の震災時に即応する防災システムが不可欠です。この分野でも、卓越した加速度センサー技術と信頼性、耐久性に優れた製品技術を兼ね備えたリオンの測定器が活躍しています。例えば新幹線や在来線では、リオンの地震計が、列車制御装置と連動して、列車運行の安全を支えています。また、全国各地のダムでは、リオンの加速度センサーがダムの各部分の振動を常時監視しています。電力会社の変電所では、リオンの地震計と連動した制御システムが構築され、地震時の送電遮断とその後の再開を自動的に行うようになっています。さらに、石油コンビナートや化学プラント、鉄鋼工場などの大規模設備の安全を支えているのも、リオンの測定器です。


製造設備の予知保全技術を支援
設備診断向け振動計

産業界では、製造設備の保全管理を人間の五感に頼っていましたが、経験によって個人差があるため、新たな手法として1980年以降、製造業の予防保全において振動法による設備診断技術が注目されはじめました。リオンはこの技術に注目し、1982年(昭和57年)携帯形振動計VM-61と設備診断ソフトを開発し、メンテナンス技術の向上に貢献しました。その後、簡易診断用には世界最小のペンシル型振動計、精密診断用には分析機能付振動計などを開発しました。これらの測定器はタービン、ポンプ、モーターなどの回転機器の振動測定に使用され、装置の故障状況や製品寿命、危険性を測定結果から診断することで、万一の事故を防ぐとともに、保全コストの削減にも貢献しています。