リオンについて
デジタルの力でユーザーとつながる、関係を深める。 ①
2023.04.20
これまでPROJECT STORYでは社会貢献度の高いリオンの製品や優れたテクノロジー誕生の裏にある開発ドラマを紹介してきた。
今回、紹介するのは、無形の概念。
現在進行形で進む、壮大なプロジェクトである。
補聴器販売の未来はどのように変わっていくのか、この構想が目指す方向について紹介する。
リオネット補聴器の最大の強みは補聴器そのものではないという発見
「リオネットサークル」とは、リオンのプラットフォームをもとに補聴器に関係する顧客(補聴器ユーザー)•医療従事者•補聴器販売店の3者をつなぎ、相互に必要な情報を共有し合いながら広く、補聴器の価値や魅力を伝えるデジタルを活用した仕組みのこと。
実現すれば、スマホなどを活用して顧客の不安や困りごとを解決しながら、タイムリーに次のアクションを提案することができるようにもなる。医療従事者や販売店に対しては、リオンが送客を行いながら、補聴器販売における煩雑なプロセスを軽減しつつ、質の高いサービスを提供したり、有益な販促情報を配信できるようになる。
現在、4つのサイト(直感的でわかりやすい「リオネット補聴器ブランドサイト」、エンドユーザー向け情報サイト「マイリオネット」、販売店向けの業務サイト「リオネット セールスポート」、医療従事者向けの情報ポータルサイト「リオネット メドポート」)をローンチさせ、第1フェーズを終えたばかり。第2フェーズでこれら4サイトの連携を強化させ、第3フェーズではネット予約システムやWEBコンサルティングなどデジタルならではの機能を拡充させていく。2025年の完成を目標に今まさに20~30人規模で動いているプロジェクトである。
連携⇒様々なサービスを生み出す土台の完成へ
そもそもこのプロジェクトは、日本における補聴器の普及がなかなか進まないという、問題に端を発している。難聴自覚者と補聴器を使用している人数から割り出される補聴器普及率が、日本では15.2%と非常に少ない。欧米先進国は30~40%といわれ、こうした数字と比較すると日本の普及率は半分以下。しかも、補聴器を購入した後、次第に使わなくなってしまう人も大勢いるという。
なぜ日本で補聴器が普及しないのかについては、文化的な背景、国民性の問題、単に補聴器が高額であるからなど、さまざまな要因が挙げられている。いずれにせよ、補聴器が必要な人にその価値をしっかり理解してもらえていないという現状がある。
「今までリオンは補聴器メーカーとして、より質の高いプロダクトを開発することでこの問題を解決しようとしてきました。でも、活路が見出せないまま何十年も経ち、次第にリオンが中心となって補聴器の価値をお客様に直接伝えていく仕組みが必要なんじゃないかという考えが社内で生まれ、広がっていったのです。それまで完全に縦割りだった当時の弊社にあって、2015年には部署の垣根を超えたプロジェクトチームが結成され、頻繁に話し合いを重ねてきました。“リオネットサークル”という言葉で本構想のコンセプトを明確に表現し始めたのが2018年頃のことです」
こう語るのは、プロジェクトの陣頭指揮をとる事業戦略室長の太田昌孝だ。モノが余る時代になり、他業界を見ても生き残りをかけた製造業の意識改革が大きく叫ばれるようになっていた。
「これからはモノを作るだけではダメです。製品を通した付加価値を提供しなければなりません」
太田はこう、確信を深めていった。
「リオネットサークル」のコンセプトを明確化していくうえで、もう1つ、ターニングポイントになった出来事がある。2016年、耳鼻科医に補聴器販売へ積極的に関与してもらうための施策検討を推進していた小さな分科会との統合だ。
「ここでクリアになったのがリオンの強みです。リオンは聴力検査装置(オージオメータ)を製造して全国の病院やクリニックに納めており、国内では高いシェアを誇っています。ここに他メーカーにはない差別化のポイントがありました。ある難聴患者さんが聞こえに違和感を抱いて耳鼻科に行き、聴力検査をする。もちろん治療で治る人もいますし、他メーカーの補聴器を買う人もいるでしょう。でも、リオンの製品で聴力検査をした段階で、接点を持つことができます。これは大変な強みだと思いました」
補聴器市場の競争には今後、従来の補聴器メーカーだけではなく、大手のイヤホンメーカーが参入してくることも考えられる。そうなるとこの市場はさらに激しい競争にさらされるかもしれない。製品だけで勝負するのではなく、患者が一番最初に行く病院やクリニックから接点を持つことができるリオンの強みを、最大限に活かす構想をプロジェクトチームは模索していった。